「ゲリ」、「エス」との思い出

 元中国の軍用犬だったシェパードを父が貰ってきて「ゲリ」と名付けてかわいがっていました。他に「エス」という雑種の犬も飼っていました。いつも洗面器に餌を入れて食べさせていました。ある時、母が帰りの遅い僕を捜してゲリのところまでやってくると、一緒に洗面器のご飯を食べていたらしいです。ゲリは大きかったので背中に乗って走ったりもしてました。本当に仲間だと思っていたんでしょうね。僕らが引き揚げのトラックに乗る時の事です。これで最後になるという思いと後を追ってこないようにという配慮から、山盛りのごはんをその洗面器に入れてトラックに乗ったんです。よく映画なんかでそんな光景をご覧になった事があるかもしれないけれど、みんな荷台にギュウギュウで立って乗ったんですよ。この2匹がね、じっと荷台を見つめてるんです。ごはんなんか食べないんですよね。これが最後の別れになるってはっきり知ってたんですよ。僕が犬が大好きで家族のように思えるのも小さい頃こんな犬との悲しい別れと心の交流があったからだと思います。今ウチにいるフクなんかも拾って育てたんですけど、とっても頭が良くって人間顔負けのところがありますよ。いつも僕の思いをフクにはちゃんと話してきかせるんです。フクはちゃ〜んと理解してますよ。

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